oneself 前編

すれ違い

次の日、哲平とは映画を見に行く約束をしていた。


外で待ち合わせてどこかに出かけるのは、春休みぶりの事。


あたしは昨日買った中でも、1番大人っぽく見える黒のワンピースを着て、香に借りた雑誌を見ながら、何とかそれっぽく髪も巻いた。


哲平は何て言うかな…


ドキドキしながら待ち合わせ場所に向かうと、すでに哲平は着いていて、あたしを見つけると大きく手を振り上げた。


「ごめん、待った?」


「いや、俺も来たとこ」


そう言ってあたしを見る哲平の視線は、あたしの頭の先からつま先までを見ているようで、緊張してしまう。


「何か、感じ変わったな…」


「変…かな?」


「いや、似合ってるけど」


あまり嬉しそうじゃない哲平。


何で?


あたし今日はいつもより早起きして、頑張ったんだよ?


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