oneself 前編
立ち並ぶショップの前を歩きながら、あたしの心は憂鬱なままで。


でもかわいい洋服がかけられているのを見ると、ついつい反応してしまう。


まだまだ欲しいものはあるのに。


今日の服装は、哲平の好みじゃなかったのかな?


それなら、どんな服装が好きなの?


昨日話してたカードの事が、チラリと頭をよぎる。


駄目もとで、両親に言ってみようかな。


その時、黙っているあたしに気遣うように、哲平があたしを呼び止めた。


「な、あの服かわいくない?」


哲平の指さす先には、春らしい真っ白なワンピースがかけてある。


「着てみたら?」


「え?」


不思議そうにするあたしの手を引いて、哲平は店員さんに話しかけた。


「あそこにかかってるのと同じやつあります?」


店員さんは「ありますよ~」と、わざとらしいほどの笑顔でその場を離れると、それと同じ型のものを数着持ってやって来た。


白と黒と紺色の色違いのもの、後はサイズ違いのものだろうか。


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