いきぬきのひ
「あたまっ、ぶつかるからぁあああっ!!」
 舐めて掛かればこの有様。わぁわぁ叫ぶ私を見て、彼がゲラゲラと横で嗤っている。
 書き割りを縫うように走るジェットコースターは、傍目ぬるいアップダウンを繰り返すだけに見えたが、狭くて低い視界は予想以上に恐怖心とスピード感を煽る。
「ぜんぜんこんなの余裕ですよって言ってたじゃないですかぁっ! この嘘つきっ!!」
 ジェットコースターの出口で、肩で息をしながら、やっとの思いで吐き出す恨み言を、何処か取り澄ましたような顔つきの彼が、軽く返す。
「え? だって、歓迎会の自己紹介で言ってたのは、そちらさんでしょ? 趣味は絶叫系マシーンのはしごです、って」
 一体いつの話をしているんだか。
「あの頃はギリギリニ十代でしたから!」
 先行く彼の背中に、悪態をつく。
「なら、アレはどうです?」
 悪戯な笑みを浮かべた彼が指さす先には、曇天の空に突き抜けるタワー型の遊具が一つ。
 思わずこちらもニヤリと笑う。
「臨むところ!」
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