あの日失くした星空に、君を映して。


右目には一切手を触れずに、左目だけにペンライトの光を当てたり、まぶたを開かされたり。


お医者さんの顔をしたおじさんが左目をジッと見つめてきて、スッと視線を逸らした。


すると


「よかった。左目は大丈夫」


目を細めて安心したように微笑むおじさん。


でも私は聞き逃さなかった。


左目…は?


左目は大丈夫ってどういうこと?


右目は?


「戸塚さん」


戸惑っていると、おじさんがネームプレートを差し出した。


おじさんの大きな手にちょうど納まるネームプレートには


【大岩 鉄男】と書かれていた。


「戸塚さん…鏡華ちゃんでいいかな?鏡華ちゃんの主治医の大岩です」


「あ……はい」


とりあえず返事をしながら、視線はネームプレート。


総合病院と眼科の文字から目が離せないでいると、大岩先生がネームプレートを胸元に留め直した。


首にさげているからてっきりそのまま垂らしておくと思ったのに、そうじゃないんだ。


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