咲かない花
「じゃあそれを・・・」
「一輪でいいです」
「はいっ。その方がロマンチックですよねぇ」と言った花屋のお姉さんは、本当にウットリした顔をしている。

お姉さん、そう来た!?

「茎が長めのにしましょうか」
「おまかせします」

こうして、ゴールドのセロファンに包まれた一輪の赤いバラを、二宮くんからプレゼントされた私は、一応「ありがとう」とお礼を言った。


「明後日、クラブの方の試合があるんです。茉莉さん、観に来ませんか」
「ごめん。私予定あるから」
「そうですか」

それから、うちの前までの約20分間、車内は二宮くんがかけた音楽だけ、聞こえていた。


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