ジャンヌ・ダルクと女騎士

バルテルミ・バレッタ

「何? どうかした、ヨウジイ?」
「その……一応、バートさんがついているようですので……。バルテルミ・バレッタという名のようですが……」
「まぁ、バートという名でフランス軍につくのは憚(はばか)られるでしょうからね。それも、あの乙女付きのとなると」
「ええ。それと、もう一人ついたそうです。何でも、乙女が先日、胸に矢を受けたとかで、大きくて力持ちの男を、その……バルテルミさんの推薦で」
「そう……。大丈夫だったのよね?」
「ええ、先日の戦いでも良い働きをされたそうです」
「乙女が?」
 シモーヌの言葉に、ヨウジイは目を丸くしながら首を横に振った。
「すみません! バルテルミさんのことです。乙女は、鎧が頑丈だったので、かすり傷程度ですんだようです」
「そうよね。ちゃんと、この町を解放したんですものね」
 シモーヌはそう言うと、溜息をついた。
 バートも元気そうでよかったわ。
 兄、アルテュールの元に帰れと言われた手前、どんなに会いたくても、自分から会いに行く勇気は無かったが、それでも彼は彼女の初恋の人であり、初めての男。忘れられる訳が無かった。
「あの、お嬢様、私はこれで失礼致します。情報収集の為に、もう一度居酒屋や宿屋を回って参りますので」
「頼んだわよ。私は、礼拝堂の中にいるわ」
「はい」
 そう返事はしたものの、ヨウジイはちらりとむこうの辻を見た。
 そこには、バートがいるはずの居酒屋があったのだが、彼女はそれに気付くことなく、礼拝堂に向かってしまったのだった。
「本当にふっ切られたのだろうか?」
 その姿に、思わずヨウジイはそう口に出して言っていた。
 だが、だとすると、あとはリッシモン様のお決めになられた貴族の元に嫁がれるだけか……。そうなると、益々手が届かなくなってしまうな……。
 心の中でそう呟き、その想いをふっ切るかのように、彼は首を横に振った。
 いかん、いかん! こんなことばかり考えていては! 私はリッシモン様の剣になると決めたのだ。お嬢様のことで、心を乱してはいかん! まずは、やるべきことをやらねば!
 そう心の中で呟くと、彼は居酒屋の方に向かって行ったのだった。
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