ジャンヌ・ダルクと女騎士

乙女の変化

「どうした、シモーヌ? 今までのお前なら、そこまで私に尋ねずとも、自らで考えたであろうに」
「そうかもしれません。ですが、今は無理です、兄上。あの短期間で女騎士へと変貌されたのを目の当たりにしては……」
「ほう……」
 アルテュールはそう言いながら、大きく目を見開いた。
「確かに、先日、ボージャンジーで会った時は、物怖じせず、それらしくは見えたが……?」
「でしょう? でも、ドン・レミで初めてお会いした時には、本当に畑仕事を手伝っているだけの素朴な子だったのですよ。剣ももてず、読み書きだって、お出来になりませんでしたし……」
「ならば、その変貌は、お前の特訓の成果ということだな?」
 アルテュールがそう言って微笑むと、シモーヌは白い頬を赤く染めた。
「そんな、大袈裟ですわ、兄上」
 彼女がそう言った時だった。
「閣下、失礼致します」
 聞きなれた男の声が扉のむこうでそう言ったかと思うと、扉が開き、東洋人が中に入って来たのは。
「どうした、ヨウジイ?」
「あの乙女がジャルジョーに入ったそうです。そこで、シャルル七世からの呼び出しがあったようです」
 リッシモンには敬語を使うが、未だに国王に即位したシャルルには敬語を使わないヨウジイであった。
 だが、そんなことよりも、二人は他の所に反応した。
「呼び出しですって!」
「まさか、そのまま捕らえるおつもりなのか?」
 シモーヌとアルテュールがそう言ったのは、ほぼ同時だった。
「それは流石に無いかと思われます。一応、祝宴が催されるとのことで、準備もされているようです」
「ほう。どこでだ?」
「オルレアンだと思います。もっと詳しい位置は、部下の報告待ちですが……」
 そう呟くように言うと、アルテュールは顎に手を当てた。
「まぁ、オルレアンに居る間は大丈夫だろう。そこは、乙女を崇拝する者が多いからな」
「ということは、祝宴の後が危ないということですわね?」
 シモーヌのその言葉に、アルテュールは頷いた。
「そうなるな」
「ならば、私が参りましょう。私でしたら、女ですし、乙女のすぐ傍にも居りやすいですから」
「それはそうだが……よいのか?」
 アルテュールはそう尋ねると、チラリとヨウジイを見た。思わず、目を伏せるヨウジイ。
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