ジャンヌ・ダルクと女騎士

リッシモンの部下

「お前は……!」
 暗い場所でもうっすらと輝いているように見える金髪に、青い瞳。
 その男を見て、黒ずくめの男が目を丸くすると、彼から庇うように数人の男達が現れて、金髪の男の前で弓を構えた。
「チッ!」
 形勢不利を悟った黒ずくめの男は舌打ちをすると、マントをひるがえした。
「逃がすな! 撃て!」
 金髪の男がそう叫ぶと、黒マントの男は路上に倒れた。矢を何本も受け、血まみれで。
「くそっ! こんな所で……!」
 路上に倒れながらも男が悔しそうにそう言うと、金髪の男がゆっくり近付きながら言った。
「殺しはしない。お前には、証人になってもらわねばならんからな」
「くそっ!」
 そう言って男が懐から何かを出そうとすると、その手首を金髪の男は踏んだ。
「うぐ!」
「抵抗するというのなら、しばらく大人しくしていてもらおう」
 そう言うと、金髪の男は黒ずくめの男の手首から足を離し、その腹に一発、拳を叩き込んだ。たちまちぐったりとなり、倒れる男。
「危ない所を、ありがとうございました」
 自分を襲った男が金髪の男達に捕まったのを見ると、暗がりから濃い紫色の中国の着物を着た男が姿を現してそう言った。
「怪我をしているな」
 その東洋人の男――楊冶論が腕を押さえているのを見ると、金髪の男はそう言い、傍にいた弓兵に頷いた。
 その途端、弓兵も小さく頷き、楊の手当てを始めた。
「あの、貴方様のお名前は?」
 素直に手当てを受けながら楊がそう尋ねると、金髪の男は微笑んだ。
「リッシモンだ」
「リッシモン様……?」
 どこかで聞いたことのある名に楊が首を傾げると、彼の手当てをしていた男が小さな声で言った。
「元帥閣下だ」
「リッシモン元帥……?」
 その名を呟き、楊はハッとした。
 そう言えば、先日、あのラ・トレムイユが自慢していたな。あの生意気な金髪元帥を追放してやった、と……。その元帥の名が、確か……。
「アルテュール・ド・リッシモン元帥閣下でいらっしゃいますか?」
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