ファインダー越しの恋
葉桜を見上げながら、涙が止まらなくなってしまった。

…まぁいいか。今、通行人はまばらで、私を気にも止めず、早足に帰宅する人ばかり。

…カシャ。

車の音以外ほとんど音がない。それくらい静かな外。

そんな中、シャッター音が聞こえた。

私は驚いて振り返る。

…、そこには、少し無精髭を生やしたヒイロがカメラをこちらに向けて立っていた。

頬をつたった涙にハッとして、それを拭おうとした。

「…そのまま」
「…え?」

キョトンとする私をよそに、シャッターは何度かきられた。

そしてまた、ハッとする。
慌ててヒイロに近づくと、カメラを奪い取ろうとした。

「…ダメだ。これは、渡さない」
そう言って、ヒョイっとカメラを持ち上げられ、伸ばした手は、ギュッと掴まれた。
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