猫の恩返し
「琴美………」


「………何ですか、突然」


「いや…。牧野を呼んだわけじゃなくてだな…」


コイツ…そんな名前だったのか

自分の、部下に対する管理能力が低いのか?!


頭を抱えていると


「ねぇ、トーゴ。これ似合う?ね、似合う?ちゃんと答えてよぉー」


ナツが甘えた声を出す


何だ、この変わり方………


勢いよく牧野に頭を向けると、俺を見てニヤッと笑った


「似・合・うっ?!」


「はいはい。似合ってるよ」


俺の言葉にキラキラした眼差しを向け、にこーっと笑うナツ


牧野のヤツ、ナツに何をしたんだ…?


ナツの変わり様に、ついていけない


「牧野…ちょっと…」


背後からジーッと俺を見る、係長の視線が痛い

親指で廊下を指し、逃げるように外に出た


「何かありました?」


「何かっていうか………何だ、あれ?」


「『何だ』とは?」


「いや…。いくら何でも、一晩で変わり過ぎだろ…」


何をどうしたら、あそこまで変われるんだ…
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