猫の恩返し
「ほらよ」


スラックスのポケットから部屋の鍵を出して、ナツに向かって放り投げた

両手を広げ、ワタワタしながらも何とかキャッチする


「帰り方、分かるか?」


「………多分…大丈夫」


………


多少なりとも不安を覚えるが、猫の野生の勘を信じるしかない

それに、今日は金曜だ

何かあったとしても、次の日を気にせずに済む


「ご飯作って待ってるね!」


「い………。それは…い───」


必要ないと言おうとしたのだが、ナツにそれが伝わったのか定かではない


「私、帰ります!」


「え?」


「帰る…の?」


皆が呆気に取られてるのも気にせず、何が入っているのか鞄を引っ掴んで事務所を飛んで出る


「小岩井くん」


「は…い」


「彼女…これからは家で待ってるように、伝えといてね」


課長の低い声に「はい」と小さく返事した
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