猫の恩返し
「『ん?』じゃねーよ。もし強盗とかだったら、お前刺されるかもしれねーんだぞ」


「ささ…れる?」


そうだ

ナツの思考回路は子供と同じだ


「………何でもない。とりあえず、むやみやたらに開けんなよ」


「んー、分かった」


ったく…意味分かってんのかよ…


呆れながらも『あのね、あのね』と、嬉しそうに振り向きながら部屋の奥へと入っていくナツに続いた


「見て見てー」


両手をバッと向けた先には、想像した通り『要らない』と言いそびれた晩飯

テーブルの上には、一見まともに見える料理が並んでいる

───が、ここに入って来る前に通ったシンクには、格闘したであろう調理器具が散乱していた


「昨日ね、琴美さんと一緒に作ったのと同じやつー」


「あ?どうやって作ったんだ?」


よく見れば、冷蔵庫には入っていなかった食材ばかりだ


「帰りに買ってきたの」


顎を上げ、自慢げにふんぞり返るナツ

猫のくせに買い物なんか出来たのか…という感心が半分と、驚きが半分
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