麗雪神話~炎の美青年~
隣を歩くブレイズをちらりと盗み見ると、彼は真剣なまなざしで門を見上げていた。

いつもはフニャフニャとして見えるが、今日は少し凛々しい気がする。

きっと緊張しているのだろう。

「緊張しなくても大丈夫ですよ。ブレイズさん。私たちがちゃんとお守りしますから」

思わずそう声をかけると、ブレイズが「へ?」と情けない声で反応した。

「いえ、緊張ではなくて……いろいろと考えていたというか…よいしょっと」

ブレイズは突然しゃがみこみ、何かを拾ってポケットにしまった。

「?」

「あ、門番の方がいらっしゃる。ほかの族長候補たちも。
急ぎましょう」

謎の行動を不審に思いつつ、ブレイズがしっかりした声を出して先頭を歩き始めたので、とりあえずセレイアはあとに続いた。

ブレイズの言う通り、門前にはすでにほかの三人の族長候補たちが集まっていた。

セレイアがまず認識できたのは、風の部族アル=イーオウの族長候補、ヴァイパの後ろ姿だった。

ひとつひとつの仕草や動きが舞うようになめらかで、優雅さを感じさせる、柔和な印象の貴公子だ。ほかのアル=ラガハテス人とだいぶ印象が違うので、覚えやすかった。

向こうがこちらに気づいて振り返った。

その綺麗な瞳がみるみる険をはらむ。

「これはこれはブレイズ。そしておせっかいな方々」

口調こそやわらかいが、その視線は凍てつくように冷たい。
< 109 / 176 >

この作品をシェア

pagetop