麗雪神話~炎の美青年~
森の中を進むうち、他の三人の姿もちらほらと見ることができた。

今日も別々にプミール獲得の挑戦をしているらしい。

四人の位置を把握しながら霧の発生に目を配っていると、不意に真っ赤な獣が近くの茂みから顔を出した。つぶらな瞳がこちらをみつめている。

プミールだ。

セレイアは昔から、このプミールという生物が好きでたまらない。故郷にいた純白の毛皮のプミールもかわいかったが、この地方にいる赤いプミールも違った風情があってかわいい。

セレイアが思わず頬をゆるませてプミールをみつめていると、プミールの方からふんふんと鼻をひくつかせながらセレイアの方へ寄ってきた。

セレイアは嬉しくなってそっとかがみこみ、プミールの頭をなでてやった。

プミールは気持ちよさそうに目を細めておとなしくしている。

「セレイア。この子、野生のプミールだよね?」

「…だと思うわよ」

ディセルが驚きを禁じ得ないのも、わかる気がする。

セレイアだって驚いているのだ。

族長候補たちが昨日一日さんざん手こずったのを目の当たりにしているのだから。

確かに、トリステアでもプミールたちは皆セレイアによくなついた。だがそれは訓練を受けたプミールだからだと思っていた。

けれど思い返してみれば、トリステアで敵討ちのため森に入った時も、野生のプミールはとても人懐こくおとなしかった。

なぜだろう。

「たまたまこの子が性格の大人しい子なんでしょうね」

セレイアはそう結論付けたが、それを覆す出来事が起こってしまった。
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