麗雪神話~炎の美青年~
「なぜこんなことをしたんです! なぜ、アル=ハルさんを裏切るような真似を!!」

「アル=ハル様を裏切るですって?」

カティリナがぞっとするほど冷たい声で言った。

「これはアル=ハル様のためよ小娘。トリステアは霧対策もできる豊かな国。その技術や文化を我がアル=ハル様のものとする、それが長年の私の夢だった。
こんなところであなたなんかに邪魔されるわけにはいかないのよ」

「だから霧に魂を売ったとでも言うの!?」

「霧に魂を売るなど、とんでもない。
霧を自在に操ってくださると言うさる方からの申し出を、受けただけよ。大丈夫、この霧はただの眠りの霧。皆死んではいないということよ。彼らはすべてが終わった後、縄で縛られた姿で目覚めるでしょうね」

セレイアは衝撃を受けた。

霧を自在に操る者…?

そんな者がいたとしたら、それは悪魔ではないのか。

カティリナはアル=ハルのため、悪魔に魂を売ったのか。

悪魔が求める見返りが、恐ろしいものでないはずがないのに…。

「こんなやり方を、アル=ハル様は望んでいないわ!」

「あなたにアル=ハル様の何がわかるというの!」

カティリナらしくない激昂した様子に、セレイアは思わず口をつぐむ。

するとカティリナがふっと笑った。

何かを嘲るような、そんな笑みに見えた。

「さあみんな! トリステア軍が眠りこけている間に、砦を落とすわよ!」

「はっ!!」

静止していた赤プミール軍が動き出す。
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