麗雪神話~炎の美青年~
ちょうど客席の反対側にしつらえられた簡易的なステージに、一人の青年が現れたところだった。

青年はぱっと人目を引くような美青年だった。

ターバンを巻いていない、燃え立つような赤毛が印象的だ。遠目だからはっきりとはわからないが、おそらく瞳も同じ赤色だろう。

そして炎のような、と形容したくなる鋭い視線。

青年は両手に抜身のナイフを持っていた。

二人が視線を奪われていると、彼が立つのと反対の方向に、高さの違ういくつもの丸い的が設置された。

客たちがやんやと騒ぐ。

あの的に、ナイフを投げるのだろうか。

でも、青年が立っている場所からかなりの距離がある。あんな場所までナイフが届くものだろうか?

その心配は杞憂だった。

ナイフ投げの青年が「はっ」と一声気合の声をあげたと思うと、ナイフは銀の軌跡を描いて見事一つの的のど真ん中に的中した。

「お~!!」

「いいぞいいぞ! 兄ちゃん!」

息をつく間もなく、ナイフは次々に彼の手からとび、そのすべてが高さも距離も違う的に的中していく。

見事としか言いようのない腕前だった。
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