麗雪神話~炎の美青年~
一日目の夜、カティリナがてきぱきと全員分の野営の準備をしてくれた。

動きに無駄がなく、あっというまにテントを設営し、見事な手際で火を起こす。セレイアたちはそれを感心しながら見つめていた。

テントの下にはいつのまにか拾ってきた落ち葉も敷きこんであり、試しに横になってみたところ、快適で驚いた。無論気候のせいもあるが、今までの旅とは快適さが大違いである。

「カティリナさん、すごいですね。旅慣れているというか、なんでもできちゃうというか」

セレイアが話しかけると、カティリナは無表情のまま「いえ」とだけ答えた。

笑えばさぞ美しかろうと思うのに、彼女は全然笑わない。

道中無駄口はいっさい叩くつもりがないようだった。

話しかけても「はい」やら「いえ」やらばかりで、とりつくしまもない。

それでも笑顔が見たくて、少しでも仲良くなれたらと思って、セレイアはしつこく話しかけた。

「あの、カティリナさんはいつからアル=ハルさんに仕えているんですか」

あたりさわりのないことを聞いたつもりだったが、カティリナはそれを聞いて少し目つきを鋭くしてしまった。

「答える義務はありません。アル=ハル様にそう命令されておりませんので」

「…………」

セレイアは返す言葉が見当たらなかった。

隣ではディセルが、助け船を出そうにもどう出すべきかわからないといった様子ではらはらと見守っている。

セレイアはカティリナの態度を冷たいと思うよりも、好意的に受け取ることにした。すなわち、「本当にきっちりした人なんだなあ」、といった具合に。

つんとしたところが故郷の大巫女ハルキュオネを思い出す。彼女も仕事には厳しいけれど、心根の優しい人だった。
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