麗雪神話~炎の美青年~

だいぶ坂を下ってきた。

コンパスの方角からすると、そろそろブレイズが落下したあたりのはずだ。

上から見えた足場はどこだろう。

セレイアが角を曲がると、氷の上に倒れているブレイズの姿が見えた。

…やっとたどり着いた!

「ブレイズさん!!」

セレイアが足を速めたその時だった。

「待てよ」

背後から声がかかった。

聞き覚えのある声だ。

セレイアが思わず振り返ると、そこには小太りの男がにやにや笑いを浮かべて立っていた。

確か……ビッチィとかいう名前の次期族長だ。

「すみません、今は急ぎますので」

とにもかくにもブレイズを救出するのが先だ。セレイアは踵を返そうとしたが、急に強い力で肩をつかまれ振り向かされた。

「なんだよつれないな。ブレイズなんてほっとけよ」

「ほっとけません! 放して!」

「お前、一人みたいだな。俺はお前みたいな上玉に目がないんだ。こいつはラッキーだぜ」

ビッチィのまとわりつくような視線が不快だった。

けれどそれどころではないのだ。
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