……っぽい。
 



「俺ってそんなに男じゃないか?」


“溺愛されてなんぼでしょう!”と渾身の告白をしたにも関わらず、先輩に「笠松も恋しなね」と言われ、さすがにどうしていいか分からなくなった俺は、大学時代からの親友・香久山家守と強引に飲む約束を取り付けた。

5月のある晴れた土曜日のことである。

部屋の片づけのあと、先輩を俺の部屋に送り届けると、俺はカグと最寄り駅で落ち合い、奴の行きつけだという焼き鳥専門の居酒屋でたんまりと愚痴を聞いてもらっていた。


俺の前には3杯目のビールジョッキ。

対するカグは、まだ1杯目のビールをデカい体のくせにチビチビと飲みながら、それはもう、たいそう美味そうに砂肝串を食している。


「まっつんは男だぜ。好きな相手と1ヶ月近くも同居して一つも手を出さないんだ、見上げた根性だと思うぞ。あっぱれだ」

「いや、そういう意味じゃ……」

「わーってるよ、今のはほんの冗談だろ? 要は、クラゲちゃんに自分が男として見てもらえてないんじゃないかってことだろ?」


砂肝串を引きちぎるようにワイルドに一気食いしたカグが、口をモグモグさせながら言った。

そう、俺が聞きたいのはソレ。
 
< 156 / 349 >

この作品をシェア

pagetop