……っぽい。
 
と、そこへ、修羅場の場面を最初から目撃していたと思われる人たちの声が耳に入った。

一人は女性、もう一人は男性。

どうやらカップルの模様である。


「ビックリしたよねぇ、目の前を歩いていたカップルの女の子のほうが急に何かに襲いかかられるんだもん。心臓止まったよ~」

「だよなぁ。襲われた本人の悲鳴が上がったと思ったら、彼氏のほう、すでに腰抜かして失禁て。よっぽどビビったんだぜ、アレ。しかもギャラリーの中からも次々女の子が飛び出してきて、彼氏そっちのけで勝手に取っ組み合いだったもんよ、あれが俗に言う修羅場かねぇ……」

「騒ぎに気づいた子が、彼氏の顔とバトる子を見て“私の彼氏よ!”って、失禁してるのに取り合ってたもんね。だから失禁だってば」

「偶然、彼氏の浮気相手たちが近くに居合わせてたっていう、この不幸よ!あの調子だと他にも浮気相手いるんじゃね? つーか、あの彼氏に本命っていんのか? どんだけ調子よく騙して囲ってたんだか……。ある意味尊敬だわ」

「彼女の数がステータスだったのかな?」

「あり得んな、んなモン」


そんな会話をしながら、カップルさんは私たちの後ろをゆっくりと通り過ぎていく。
 
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