……っぽい。
 
課長と大崎ちゃんはもちろん諸事情によって最初から知っていたけれど、一切話した覚えのない田原さんにまでなぜかバッチリ知られていたのには、さすがに戦慄の意を隠せない。

みんなの冷やかしに耐えきれずに一旦トイレに離脱した私を追ってきてまで「マムッポンのとき、笠松君をアシストしたのは私よん。あの夜、どうだった?」なんて耳元で囁いてくるものだから、初めて笠松とキスしたときの感覚が蘇り、思わずぼんっと顔が赤くなってしまった。

鏡と向き合っていたから、みるみる真っ赤になっていく自分の顔がよーく観察できてしまい、とても恥ずかしい思いをした私だ。


そんなことがありつつも、ようやく課に落ち着きが戻った頃、ナマケラゲも発売になったというわけで、発売日以降はこの通りの嬉しい悲鳴がヒーヒー上がる毎日を過ごしている。

もしかしたら、凱旋帰国さながらに大腕を振って帰ってくる笠松のことを、課のみんなは私以上に心待ちにしているのかもしれない。


そういう私は、目が回るほどの忙しい毎日の中でも、やることは一つも変わらなかった。

発売日以降のキャンペーンで手応えを感じた笠松からの興奮した電話やメールの受け答えに、お土産の受け取り業務、しほりへの報告。
 
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