……っぽい。
 
そこで私の腕を取る手にわずかに力を込めた笠松は、ふとこちらに顔を上げた。

暗くてあんまり見えないけれど、照明の当たり加減なのか、眼光だけは鋭く、でも優しげに照らし出されていて……不覚にも胸がトクンと。

笠松相手にさせられる。


「だから先輩は、俺がいいって言うまで誰にも恋しないでください。もしも気になる男ができたら、そのときは必ず俺に話して、俺も一緒に会いに行って、安心して恋ができる相手だと俺に確信が持てたらゴーサイン出します」

「笠松……」

「結局のところ今回は泣き寝入りする形になりそうですけど、でも、もう二度と先輩が泣く姿なんて見たくないんです。泣いてる顔よりバカ丸出しで笑ってる顔のほうが先輩らしいんで」

「……」


やっぱり何気にひどい……。

けれど、笠松が一生懸命に私を励まそうとしてくれているのが分かるから、いつものようにアホな言い合いに持っていくようなことはできずに、ただただ笠松に腕を取られるだけだ。

それに、不思議。

全然嫌じゃないし、後輩男子の許可がないと恋の一つすらできないという、先輩としては屈辱的な状況下になってしまったのにも関わらず、女としての私は、ちょっと安心している。
 
< 69 / 349 >

この作品をシェア

pagetop