Switch
『か、身体が腐ってたら、このままでいいよ。ていうか、多分身体が駄目になったら、師匠が教えてくれるだろ』

「まぁ……それもそうか」

 ふむ、と頷き、前を向いた貫七は、少年の視線にぶつかった。

「……その猫……」

 じーーーっと貫七からおりんに視線を移し、少年が言う。
 ぴょこんと、おりんが首を伸ばすように少年を見た。
 しばし、少年とおりんが見つめ合う。

「……ん~。どうしよっかな? ていうか、おいら、その子気に入っちゃった。おいらとしては、そのままでも一向に構わないんだけど、とりあえず魂を戻せた暁には、その子、おいらが貰うってのはどう?」

『ええっ!』

「駄目だ」

 少年の提案に、おりんの驚きの声と、貫七の拒否の声が、間髪入れずに放たれた。

 一瞬、しん、と沈黙が落ち、おりんはそろりと貫七を見た。
 少年も、ちょっと驚いたように目を見開いている。

「え? 何で? 出来ることなら何でもするって言ったじゃん」

 軽く、少年が言う。

「ああ。でもそれだけは、『出来ないこと』だ」

 きっぱりと言う貫七に、少年は大きく首を傾げた。

「何で? 簡単なことじゃない? しかも自分は何もしなくていいんだよ?」

「だとしても、だよ。あんたは人外とはいえ、悪いモンじゃねぇだろう。でも、おりんは人間だ。いくら猫のままだろうと、あんたにやる気はねぇよ。それぐらいなら、俺の命をやる」

 おりんは驚いた。
 そこまで想ってくれているのか。
< 136 / 252 >

この作品をシェア

pagetop