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第八章
参道の露店を片っ端から廻った貫七が、肩を落として宿に帰ったのは、日が暮れてからだった。
「ああ……疲れた」
部屋に入るなり、ごろりと横になる。
おりんが肉球で、貫七の足を押していると、すらりと襖が開いて政吉が入って来た。
「あ、お帰りなさいませ」
寝転がっている貫七を避けて部屋に入り、腰を下ろす。
「……お嬢さんは?」
政吉が一人でいるなど珍しい。
貫七が問うと、政吉は窓の外へと目をやった。
「あそこの甘味処に」
起き上がって窓に顔を近付けて見ると、すぐ前に小さな茶屋がある。
目を凝らすと、お嬢さんらしき人が見て取れた。
「あそこなら、張り付いておかなくても大丈夫ってか」
「お嬢様も、たまには息抜きが必要でしょうから」
ちらりと、貫七は政吉を見た。
こいつは一体、お嬢さんのことをどう思っているのだろう。
お嬢さんの正体など、内情を聞いていたときは、良くは思っていない印象を受けた。
でも、やはり何だかんだで気に掛ける。
それは奉公人としての忠義だろうか。
そもそも何故、政吉は仕事を放りだしてまで、このように当てのない旅に出たのか。
手代というからには、それなりの地位だ。
店に断りもなく、姿を消していいはずはない。
「ああ……疲れた」
部屋に入るなり、ごろりと横になる。
おりんが肉球で、貫七の足を押していると、すらりと襖が開いて政吉が入って来た。
「あ、お帰りなさいませ」
寝転がっている貫七を避けて部屋に入り、腰を下ろす。
「……お嬢さんは?」
政吉が一人でいるなど珍しい。
貫七が問うと、政吉は窓の外へと目をやった。
「あそこの甘味処に」
起き上がって窓に顔を近付けて見ると、すぐ前に小さな茶屋がある。
目を凝らすと、お嬢さんらしき人が見て取れた。
「あそこなら、張り付いておかなくても大丈夫ってか」
「お嬢様も、たまには息抜きが必要でしょうから」
ちらりと、貫七は政吉を見た。
こいつは一体、お嬢さんのことをどう思っているのだろう。
お嬢さんの正体など、内情を聞いていたときは、良くは思っていない印象を受けた。
でも、やはり何だかんだで気に掛ける。
それは奉公人としての忠義だろうか。
そもそも何故、政吉は仕事を放りだしてまで、このように当てのない旅に出たのか。
手代というからには、それなりの地位だ。
店に断りもなく、姿を消していいはずはない。