Switch
第一章
「大体嬢様。こいつは用心棒どころか、返って厄介事を巻き起こす疫病神じゃありませぬか」
お由がじろりと貫七を見上げながら言う。
途端に貫七の肩の上のおりんが、シャーッと毛を逆立てて威嚇した。
ささっとお由はお紺の後ろへ。
このおりんという猫も、考えてみれば不思議なのだ。
貫七が初めて現れたときから、ずっと連れていた。
用心棒とはいえ、貫七自ら出張ることは滅多にない。
何故なら自身で言うように、貫七が姿を現したほうが、その場がややこしくなるからだ。
無頼の荒くれ者も、貫七を一目見れば魂を抜かれたようになる。
それだけで追い払えればいいが、そうはならないのが悲しいところだ。
そのまま貫七に付きまとうことになる。
そこでもっぱら働いているのが、この猫であるおりんなのだ。
おりんはまるで、人の言葉がわかるかのように振る舞う。
用心棒働きをするときは容赦なく敵に牙を剥くが、どんなにいきり立っていても、お紺に傷をつけることはない。
絡んできた男をばりばりと引っ掻いているおりんを慌ててお紺が引っ剥がしても、今までの延長でお紺まで引っ掻くことは、決してないのだ。
動物にはあり得ない冷静さである。
お由がじろりと貫七を見上げながら言う。
途端に貫七の肩の上のおりんが、シャーッと毛を逆立てて威嚇した。
ささっとお由はお紺の後ろへ。
このおりんという猫も、考えてみれば不思議なのだ。
貫七が初めて現れたときから、ずっと連れていた。
用心棒とはいえ、貫七自ら出張ることは滅多にない。
何故なら自身で言うように、貫七が姿を現したほうが、その場がややこしくなるからだ。
無頼の荒くれ者も、貫七を一目見れば魂を抜かれたようになる。
それだけで追い払えればいいが、そうはならないのが悲しいところだ。
そのまま貫七に付きまとうことになる。
そこでもっぱら働いているのが、この猫であるおりんなのだ。
おりんはまるで、人の言葉がわかるかのように振る舞う。
用心棒働きをするときは容赦なく敵に牙を剥くが、どんなにいきり立っていても、お紺に傷をつけることはない。
絡んできた男をばりばりと引っ掻いているおりんを慌ててお紺が引っ剥がしても、今までの延長でお紺まで引っ掻くことは、決してないのだ。
動物にはあり得ない冷静さである。