君と手を繋ぎたくて








「…答えなさいよ。
ユウシにとって、ヒナノは誰?」

「…………」

「…ッ答えなさいよ!」




人目を気にせず、わたしは叫んだ。





「……彼女だよ、ヒナちゃんは」




ユウシは静かに、だけどハッキリ言いきった。





「ヒナちゃんは、俺の彼女だ。
付き合ったのは、つい最近だけど」

「じゃあ何で、さっきは言わなかったのよ」




ユウシは笑った。

わたしは、その笑顔も嫌い。

自分を上手に隠してしまう、その笑みが嫌い。





「……自信が、ないから」




ユウシは笑みを崩さないまま、言った。

笑ってはいるけど、本当に心からは笑っていない。

…わたしが最初に、ユウシの笑顔を見たのは、いつだったかしら?




いつも、ユウシは無表情だった。

笑顔なんて感情は、なかった。

笑う時は、あった。

だけど、目の奥は決まって笑っていない。

口元だけ、三日月形に歪められるだけなんだ。







< 71 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop