君と手を繋ぎたくて







「先輩、座ってください!」




あたしは遠慮している先輩の腕を強引に掴み、先ほどまで佐竹先輩が座っていた長椅子に座らせた。

保健室なんて滅多に来ないけど、絆創膏ぐらいはあるだろう。

先輩が座るときに見たけど、出血は殆どしていない。

だけど血は滲んでいるから、きっともう止血したのだろう。

止血しているのなら、包帯がいるほどの大怪我ではない。

絆創膏で隠せる大きさだから、前髪で隠してしまえばさほど気づかないだろう。





あたしは棚の中から絆創膏が詰まっている箱を見つけ、1枚取り出し、先輩の額に貼った。

イケメンの顔に絆創膏は不似合だけど。

小さくても怪我は怪我だから。

仕方ないことだ。





「先輩。
絆創膏は一応貼っておきましたけど、怪我している場所は頭に近いので。
外見では問題ないですけど、もしかしたら頭の中がどこか怪我しているかもしれないので。

頭痛とかしたら、悪化する前に病院に行ってくださいね?」





放っておいて悪化して、そのまま…なんてことは、哀しいことだけどよくあることだ。

先輩には死んでほしくないから。





「……ありがとう」

「お礼を言うのはあたしの方です。
本当に、ありがとうございました。
先輩が守ってくれたお蔭で、あたしは無傷でした」




気が付けば、あたしの目から涙が流れていた。








< 95 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop