偽物少女の受難な恋



「で、大丈夫か?あんた」


少年が私の前にしゃがみこみ、そう問いかけてきた


『あ、た、たぶん』


嘘だ、本当は怖くてたまらなかった


でもこの少年にこれ以上迷惑や心配をかけるわけにはいかなかった


もう大丈夫だから、そういおうとしたそのとき、肩に何か暖かい感触がした


『これは...』

それは彼が先程まで羽織っていた制服のジャケットだった


「あのさ、別に今更強がらなくたっていいじゃん。肩、めちゃくちゃ震えてたし」


少年がめんどくさそうに言い、ため息をつく


『す、すいません』


気を悪くさせてしまったのだろうか....不安になり、必死に謝る


すると彼はその手をそっと私の背に乗せポンポンと赤子をあやすように優しく叩いた


「あんなことあった後なんて、怖いに決まってるだろ。悪いな、俺がもう少し早く来てれば...」

私は俯きながら必死に首を横に振った


違う、彼は何にも悪くなんか無い


ゆっくりと叩かれる彼の手に合わせるかのように、涙が一粒、また一粒とこぼれ落ちた


その後も彼は私が泣き止むまで傍に居てくれた





ーーーーーーーーーーーーーー



今はいったい何時だろうか?涙も収まってきたところで携帯を取り出し、時間を確認しようとした


『うわ、なにこれ....』


するとそこには数え切れない程の不在着信があった


私が驚いている間にも、電話はかかってきた


『も、もしもし....』

「お嬢さま!ご無事ですか!」

もしもしに対する受け答えがそれってどうよ...そう思ったが今はそんなことを言ってる暇はない

『え、ええ。ただ、少し迷ってしまって...』

「今すぐに向かいます!どこの近くにおられますか!?」

『えっと....』


路地裏です、なんていうわけにもいかず途方にくれてひたすらにあたりを見回す


「駅の近くのカフェって言っとけ」

『....え?』

そのとき、わたしのこの電話での会話を聞いてたであろう彼がボソッと呟いた

「いいから!」


『え、駅の近くのカフェ!』

「わかりました!今すぐに向かわせていただきます!」


そこで電話は切れてしまった


私は彼にお礼を言おうと横を向いたが、彼は既に立ち上がっていた


「ほら、いくぞ。そこまで案内してやるから」

『え、あ、はい!』


彼に差し伸べられた手に捕まり腰を上げる


「ほら、さっさと行かないと怪しまれるぞ」


そういいながら彼はスタスタと足を進めていく


その中私は、今までに感じたことの無い胸の動機に悩まされていた







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