近くて遠い恋


それからずっと隆斗の背中を見ながら話をした。



カラオケ店から家までは結構遠いから、話題もそれなりに変わっていく。



するとこれまで私の話にぶっきらぼうにうん、とか、そうかとか、よかったね、とか言ってた隆斗が急に質問を挟んできた。。



「お前って好きなやついるの?」



「好きな人?」



好きな人か。うーん。いないな。いきなり何を言い出すかとおもったら、変なことを聞いてくるんだね。



私はすぐにいないと答えた。



「じゃあ隆斗はいるわけ?」



隆斗はぴたりと足を止める。



どうせいないよとかいうと思ってたけど、予想外な質問だったのか、なかなか言い出さなかった。



一体何をそこまで考える必要があるんだろう。今日の隆斗は変な奴だ。



話を逸らそうかなと思った時、やっと答えてくれた。



「いるよ。好きなやつ」



「え。だれ? ちょっとだけヒント」



「言うわけないだろ。アホか。もしヒント欲しいなら学校の自販機全部買い占めてくれ」



なんて無理難題な条件を言って、隆斗はまた歩き始めた。



私は帰宅するまで、誰が好きなのか予想してたけど、全く分からなかった。



気になって、仕方なかった自分がいた。


< 27 / 30 >

この作品をシェア

pagetop