オトナの恋を教えてください
「-----いろは」


その声は、俺といろはの真横から聞こえた。

ぞくっとした。
低い女性の声だ。

俺たちは顔を向ける。


「何をやっているの?」


そこにはいろはの母親・三条姫子がいた。
濃紺のスーツをびしっと着こなし、雑誌から抜け出てきたような女が立っている。

俺だってよく知っている有名人だ。見間違えだったらいいけど、そんなわけはない。


「お母さん……」


「離れなさい!!」


三条姫子が鋭い声をあげ、俺の腕からいろはを引き剥がした。
俺をぎろりと一瞥した瞳は、野生の肉食動物のように獰猛で、付け入る隙は1ミリも見えなかった。

しかし、俺を見たのは一瞬。
すぐにいろはの腕をつかみ、ずんずんと歩き出す三条姫子。


「いろは!!」


俺は叫んだ。

いろはが引き摺られながら、顔だけ振り向く。
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