オトナの恋を教えてください



営業企画部の代田橋部長に呼ばれた時、俺はまだ自分の身に起こりかけていることを、まったく知らなかった。


「福岡支社ですか?」


俺の問いに代田橋部長はうんうんと上機嫌に頷いた。


「一応、栄転な。主任っつう役職になるから」


「やだな、残業代つきづらくなるじゃないですか」


俺が動揺を隠してふざけると、代田橋部長は大声で笑った。


「残業減らして博多美人と遊べばいいじゃないか。福岡は楽しいぞー。おまえ、絶対好きだと思うけどな」


はは、と笑い返しながら、頭の中で様々なことが駆け巡る。

いろはを代官山の自宅まで迎えに行ったのは、昨日のできごとだ。
いろはが母親と対峙し、ようやく自立の道しるべを見つけてから、まだ一日しか経っていない。

こんなことってあるのか。
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