オトナの恋を教えてください
朝から早く上がるために画策していた甲斐もあり、スムーズに退勤できた。

玄関ホールに向かうと、柏木さんが人目もはばからず手を振っている。
あーあ、すぐそこに受付があるのに。私、また怖いお姉さんたちに指導を受けることになっちゃうよ。


「お待たせしました」


まあ、いいやと私は柏木さんの横に並んだ。
以前より怖いことは減ったように思う。

西新宿をぶらぶら歩きだす。
今日、柏木さんが来ることは聞いていたけれど、行く場所は決めていない。

柏木さんが口を開く。


「急に悪いな。付き合ってくれてアリガト」


「本社出張だなんてお忙しいですね」


転勤してすぐはしょっちゅう東京に来ていた柏木さんも、ここ半年ちょっとはずっと福岡から離れていない。
柏木さんがセンチメンタルな口調になる。


「あれからもう1年が経つんだな。本当に久しぶり。いろは、綺麗になったよ」
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