愛せない妻へ。
『やっと…やっと春時さんの元へ行けるわ』
『は…?』
春時…?
誰だそれは。
春時なんて名前知人に誰一人いない。
『春時さん……大好きよ』
ゆっくり瞼を閉じた妻。
それから妻は目覚めることもなく、静かに亡くなった。
連絡を聞きつけて子ども達が泣きながら
妻を抱きしめる中、私はずっと天井を見つめていた。
妻は最後に私ではない知らない男の名を呼び、愛を告げ、命の終止符をついた。
この事実が私の中で重くのしかかったのだ。