まだ、心の準備できてません!
「すっごいね、美玲! 謎のイケメンに翻弄されまくるなんて……羨ましい!」

「何で羨ましいのよ」


ピンク色に染まる両頬に手をあてて悶える由香に、冷めたツッコミを入れる私。


「いくらイケメンでも、得体の知れない人はちょっとねぇ……」

「えー、イケメンだったらストーカーされてみたいけどぉ」


……大丈夫かなぁ、このコ。

ピンと立てた人差し指を顎につけて言う由香に、一抹の不安を覚える。

けれど彼女は、「まぁそれは冗談として」と言って、とろとろの卵に包まれたオムライスをスプーンですくった。

どうやったらその小さな口に入るの?というくらいの量をがっつりと。


「絶対その人美玲に気があるでしょう」

「そうかな……? からかわれてるだけのような気がするけど」


私も自分のサラダにフォークを差し込むと、すごい早さでさっきのオムライスを胃の中へ消した由香が、眉をひそめる。


「からかうだけで、わざわざ誕生日プレゼントまで用意するー? しかも酔った可愛い女の子を部屋まで運んでくれたのに、何もしないで帰っちゃったんでしょ? 遊びならヤッちゃってポイするんじゃない、普通」


アニメちっくな由香の声で言われると可愛らしく聞こえるけど、結構恐ろしいことを言っている。

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