まだ、心の準備できてません!
最悪の場合まで考えを飛躍させていると、以前お父さんが言っていた言葉を思い出す。


『マシロも、いつまで続けられるかわからないんだから』


お酒を呷りながら言っていたあの時から、お父さんはこんな不安を抱えていたのだろうか。

急激に焦燥感が押し寄せる。


「何で、そんな大事なこと言ってくれないんだろう」

「私達に余計な心配かけさせたくないからでしょう。優しい店長の考えることだからね」


トレーをぎゅっと握りしめてしまう私の背中をぽんぽんと優しく叩き、浜名さんは眉を下げて微笑む。


「でも、まだそうと決まったわけじゃないし、本当に危ういならさすがに私達にも言ってくれるはずだから、今は静観するしかないんじゃないかしら」

「そうですね……」


そうは言ったものの、スッキリしない気分のまま頷き合った私達は、とりあえず再び箱詰めの作業を再開させた。

考えてしまうのはマシロの今後のことばかり。

本当に、私に出来ることは何もないのかな……。


仕事をしながらしばらく思案したけれど、とりあえずこれだけはやっておかなければいけない。

ライバル店“トワル”の偵察だ。

明日は定休日だから行ってみようと心に決め、この日はいつも通りに業務をこなした。


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