まだ、心の準備できてません!
とりあえずカウンターに突っ伏して寝させておき、ジャスミンが歌い終わるまで待っていた。

満足した彼女がカウンターの中に戻ってくると、寝息を立てている美玲ちゃんに気付いて目を丸くする。


「あらっ、寝ちゃってるの? もしかして、酔わせてお持ち帰り作戦!? やだぁー夏輝ちゃんがそんなことしてくれるなら、アタシもお酒弱いフリしとくんだった~!」

「照ちゃん、タクシー」


彼女の言葉を完全に聞き流し、財布を取り出しながら言う。

「だから照ちゃんって呼ばないでってば!」と頬を膨らませながらも、すぐにタクシーを呼んでくれた。


美玲ちゃんを抱きかかえながら地上へ出ると、「ぅん……」と小さな声を漏らして、動き始めた彼女は目をこする。

腕の中、とろんとした瞳で俺をぼんやり見つめる彼女はとても愛らしくて、自然と頬が緩んだ。


「起きたか? 自分の住所言える?」

「ん……じゅ、しょ?」


まだ酔いからも眠りからも覚めきっていない、ボケッとした様子の彼女に笑ってしまう。

なんとか住所を聞き出せたことにホッとしつつ、待っていたタクシーに乗り込んだ。

俺の肩に頭を乗せ、むにゃむにゃと何かを言う彼女には飽きさせられることはなく、家までものの五分程度の道のりは数秒に感じるほど短かった。

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