まだ、心の準備できてません!
「……そうか。じゃあ俺も行くよ」

「えっ? でも……」

「雪だから車で行こう。俺も、君のお母さんに会いたいから」


優しく微笑みながら言う彼に、心が温まるのを感じて、私は素直に頷いた。



夏輝さんが暮らすマンションは、商店街から車で約十五分の市街地にあるという。

商店街に用がある時は、トワルの社員用駐車場を使っていて、今日も止めさせてもらったのだそう。


そこへ向かう前に、私達は墓前に供える花を買うため、ハーティへ寄ることにした。

目的はもうひとつ。陽介に、しっかり自分の気持ちを伝えるためだ。

自分の恋心をようやく認めることが出来た今、陽介にはちゃんと言わないといけない。

私は、夏輝さんのことが好きだって。


小雪が舞う中ふたりで寄り添うようにして歩き、ハーティのすぐそばにやって来ると、夏輝さんが足を止める。

「ここで待ってるから行ってきな」と穏やかに言う彼に、私はしっかりと頷いた。気を遣って、陽介とふたりにしてくれることがありがたい。

ひとりでお店のドアを潜ると、花の手入れをする陽介と、レジカウンターに彼のお母さんがいた。


「あら、美玲ちゃん! いらっしゃい」


明るい笑顔を見せるおばさんに、私もいつものように笑って「こんにちは」と返す。

それに比べて、陽介はどことなく覇気がない。

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