まだ、心の準備できてません!
仕掛けてきたとか奥手とか……陽介が私に気があると言っているようなものなのでは。

そんなふうに思っていると、阿部さんがカウンターに両手をついて、ズバリ聞いてきた。


「美玲ちゃんは、陽介くんのこと友達としか思ってないの?」


ぴたり、モップを動かす手を止めた。

陽介のことを恋愛対象として見られないのか、これまでに考えたことは何度かある。

でも、行き着く答えはいつも同じだった。


「陽介のことは好きだけど……やっぱり友達っていうポジションが一番ラクですね」


男女の付き合いをするとなったら、お互い好きなことばかりはやっていられない。気を遣わなければ上手くいきっこないし。

友達ならそんなことまで気にせず、気楽に付き合える。

本気で好きになった相手なら、我慢を我慢と思わずに、自然と愛を尽くすことが出来るかもしれない。

でも、陽介に対して、私がそこまでのことが出来るとは思えないのだ。


それに、一度付き合ったら、もう友達には戻れないかもしれないじゃない。

もし、また“あの時”みたいなことがあったら……。

私は、陽介とはずっと波風を立てないで付き合っていきたいの。

友達とは言え、彼はとても大切な存在だから。

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