まだ、心の準備できてません!
バッグを持って店内へ戻ると、出入り口のドアの外に陽介の姿が見える。

浜名さんと阿部さんに「お先に失礼します」と挨拶して、お店を出た。


「お待たせ」


後ろを向いていた陽介の肩をぽんと叩くと、くるりと振り向いた彼は、私の目の前に何かを差し出した。


「お疲れ様。あと、誕生日おめでとう」


そんな言葉とともに、私の目に飛び込んできたものは……

オレンジ色のバラと、ピンク色のトルコキキョウの、小さな花束。

本物より一足先に咲いた花火のように、暗闇に浮かぶ鮮やかな花はとても綺麗だ。


「わぁ、綺麗……!」


花束から目線を上げると、外国人の男の子みたいに髪の毛をふわふわさせた彼が、ほんの少し緊張したようにはにかむ。


「……受け取ってください、美玲さん」



──突然かしこまる陽介が、一瞬王子様みたいに見えた。


ぽかんとしていた私は、はっとして花束に手を伸ばす。

うちで扱っているよく見慣れたボルドーのペーパーも、こうやってラッピングされていると別物みたい。

両手で抱えるような豪勢な花束でなくても、陽介が私のために作ってくれたのだと思うと、ちょっと感激。

彼から誕生日にこんなプレゼントをされたことはなかったし。

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