ひと夏の救い


何を言っているか分からないと思うけれど、私も分からない。何がどうしてどうなっているのか全く把握出来ていないから。

ただ、目の前にいるのは確かに鬼婆だわ。

疑問符をポポポポンと一気に四個くらい頭上に浮かべていると、鬼婆が私の顔を見てため息をついた。

「色々と言うことはありますが、とにかく保健室に行きましょう」
「ありがと、センセー」

鬼婆が、怒らない???
なんて摩訶不思議な事態。これこそ七不思議では?私を見たらつり上がった目で注意を千万と並べ立てて捲し立てるのに、私と目が合ってるのに怒らないなんて…!

私が今日一番というくらい混乱している内にさっさと返事をした澄晴が立ち上がって保健室まで運ばれた。
真っ暗な中にずっといたから、鬼婆が鍵を開けて電気をつけた瞬間光がとっても眩しかった。

存外手慣れた手つきで鬼婆が捻った方の足首を慎重に持ち応急処置をしてくれ、局部高く上げないといけないと椅子の上に片足を置くちょっと格好がつかない形だけれど、固定されて少し楽になった。
鬼婆はどこか、多分警察だろうけれど、電話をしてから振り返った。

「さてと」

ぎろり、いつものつり上がった目でこちらを見る目に逆に安心する。

「全部話してくださいね」

全く抑揚のない声に安心する私の隣で、澄晴は顔を引き攣らせて笑った。


< 139 / 145 >

この作品をシェア

pagetop