ひと夏の救い
※ちょっと汚い表現です。ご注意下さい。


先日、つい夢中になって随分と夜の帳が降りきってしまっていた時のこと。

ふと窓の外を見て夜が更けていることに気付いて、
急いでトイレに行って寝ようと思い、向かった先で、少年は見たのだ。

ゆらぁ…

「だれ…?」

ゆらゆらと左右に大きく揺れながらおぼつかない足取りの影。

電気も着いていないので顔は分からない。

「んあぁあー??」

その何かは変な鳴き声を出して、ボサボサの髪の毛の間から虚ろな目を少年に向けた。

少年の母親はいつもピシッとした格好で、こんな変な歩き方をしたりしない。
いつも少年にしっかり喋りなさい!と叱る母親はこんな変な声を出したことは無い。

知らない人だ。何か分からないものだ。

少年は無意識に震え、後ずさっていた。声も出て来ない。この家には自分と母親、そして父親しか住んでないはずなのに、一体何がいるのか。

たしか、そんな得体の知れないものを『おばけ』といった。

「んで…」

ゆらり、おばけが足を擦りながら進み出す。

そしていきなり走り出した。

「ひえぇっ!!」

少年はこれまで出したことの無いような声を出して後ろを向き、自室に逃げようとした。

しかし、

「うらあ〜!」

また変な声を出すおばけが少年に飛びかかった。

バッタン!!ゴンッ!

「いたいぃ…」

上に乗ったおばけが重いし、勢いで頭も打ってしまったようで少年の目からポロポロと涙が溢れ出した。

「うう…ううぅーっ」

頑張ってどかそうとするが、少年の華奢な手では倍の大きさのおばけはピクリともしない。涙は零れ続ける。

「よふかしはぁ、だめってぇ…」
「ふえぇ!」

ゆらりとおばけが起き上がり、その隙に慌てて抜け出なければと這おうとした少年の体はしかし、ガシッと強い力で肩を掴まれた事により動かせなくなった。

とうとう鼻水がつうっと垂れる。

「…言ったでしょぉがあぁー!!」
「ふひゅ!」

正に鬼のような形相のボサボサの髪でよれた服を更にぐしゃぐしゃにしたおばけに何かを言われたが恐怖で言葉は分からない。

ただ、恐怖の淵に立たされている真っ只中だった少年は、バックンバックン動く心臓がその大声によってきゅっと縮まり、これまた口から変な音を出しながら失神した。




じょぼぼぼぉ〜…

そして失禁した。

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