課長の独占欲が強すぎです。

 はっきり言わないでよ、もう! と顔から火が出そうになりながら小さくコクリと頷く。

「……ほとんど男性とお付き合いした事がないんです。だから……キスだって和泉さんとしたのが2回目だし、それ以上のことは何もした事も無いし分からないんです」

 半ばヤケクソになりながらも、これで考え直してくれるだろう事を願っておずおずと口にした。

 ところが、返事の変わりに耳に届いたのは勢い良く車のエンジンが掛かる音。「え?」と思って顔を上げてみれば、こちらを向いた和泉さんが射抜くような眼差しで私を見る。

「選ばせてやる。俺の部屋とホテル、どっちがいい」

「え?」

 目をしばたいた私に、和泉さんは不適な笑みを口元に浮かべて宣告した。

「そんな事を聞かされて黙って帰す男がいるか。一晩中抱いて新しい世界を教え込んでやる。さあ選べ、部屋とホテルどっちがいい」

 耳に響く声が恐怖のどん底へ突き落とす悪魔の声に聞こえて、私は恐ろしさの余り声すら出てこない口で「嫌ぁーー!!!」と叫んだ。


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