課長の独占欲が強すぎです。
 
 だから今日も。私は和泉さんの横顔が見えるように、テーブルの角を挟んだ隣のクッションに腰を降ろすと
 
「気にしないで読書続けてください」

そう言って手元の本を適当にひとつ拝借した。

 そして、本を読むフリをしてこっそり和泉さんの読書姿を楽しむのが、私の楽しみになりつつある。

 夏の夕暮れに染まった部屋で静かに本を嗜む時間。彼の醸し出す凛とした雰囲気が、昼間のうだるような空気を清浄してくれてるような気がした。



「和泉さんて本が好きですよね」

 すっかり日も暮れたPM7時。ふたりで囲むテーブルには私の作ったゴーヤチャンプルとレモンソースを掛けた冷しゃぶが並ぶ。

 私は意識してビタミンを摂取しながら、さっきの和泉さんの読書姿を思い出して話題を振ってみた。

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