課長の独占欲が強すぎです。

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 いささか引っ掛かりはしたものの、そんな出来事もすっかり忘れていた9月。ひまわり出版の少女雑誌『レジーナ』の創刊20周年パーティーが都内のホテルで行われた。

 もちろん我々少女漫画部門営業課の面々も全員参加して朝から準備に追われている。

 慣れないフォーマルのスーツを纏い、受付のアシスタントをしていると会場には続々と著名な漫画家さん達が集まってきた。

 出版社といえど営業事務の私が漫画家さんと直接会える機会はそうそう無い。有名な大御所作家や憧れの作家を目の前にして胸がドキドキと高鳴る。思わずサインを求めてしまいそうになる気持ちを抑えて、一生懸命受付に従事した。

 おおよその受付が済み後片付けが終わったので会場へ入ると、中は既に歓談の時間を迎え和やかなムードになっている。

 立食形式なので会場に広く散らばっている人を避けながら、私は営業課の見知った顔が集まるグループの元へと向かった。

「橘さん、おつかれ。受付終わったの?」

「はい。もう大丈夫みたいです」

 パーティーは社外のお客様も多く知らない人ばかりなので緊張する。東さんや先輩たちの顔を見ることが出来てようやくホッと一息がつけた。

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