課長の独占欲が強すぎです。

「だよね。橘さんが聞いてないならやっぱ違うって。ただのガセだよ」

 いかにも取り繕うように牧田さんは皆に向かって笑ったけれど、私は動揺を隠し切れない状態で彼に詰め寄る。

「異動ってなんですか? 和泉さんここの課長じゃなくなっちゃうんですか? 私何も聞いてません」

「落ち着いて、橘さん」

 食って掛かる勢いの私を、牧田さんが肩を抑えてなだめる。他の先輩達が複雑そうな表情をして視線を交し合ったあと、ひとりが私に向かって口を開いた。

「宍尾さん、編集に戻るかもしれないってちょっと噂で聞いたんだよ」

「編集に?」

 全くの初耳だったけれど、それは和泉さんの過去を知った私にとって意外な話ではなかった。

 やっぱり和泉さんは編集部に戻りたいのかもしれない。けれど、そう考えた私の耳をもっと驚く言葉が通り過ぎていく。
 
「有栖川栞が希望したんだって。今度の新連載にあたって、文芸と少女漫画に詳しい宍尾さんを担当につけて欲しいって」

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