課長の独占欲が強すぎです。

 和泉さんは怪訝な表情を消すと目をしばたかせ、私が思っていたより軽い声色で話し出す。

「なんだ。様子がおかしいと思ったら、まさかそんな事を気にしてたのか?」

「そんな事って、当たり前じゃないですか。私、和泉さんが編集部に行っちゃったらどうしようって凄く不安で」

 こっちは胸が張り裂けそうな思いで言っているのに、和泉さんは対称的に今にも笑い出しそうに目を細めた。

「お前は馬鹿か。俺がお前や営業のやつらを置いて黙って編集に行くわけないだろう。そういう話は確かに来てるが俺は行くつもりはない、いらん心配だ」

 拍子抜けするほど答えはあっさり返されたけれど、私の燻りはまだ消えない。

「それが……有栖川さんのお願いでも、ですか」

 もう1度キュッと彼のパジャマを掴むと、綻んでいた表情が変わった。

 わずかに落ちた沈黙のあと「どういう事だ?」と尋ねられた低い声に、私は小さな深呼吸をしてから口を開く。

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