課長の独占欲が強すぎです。
 
和泉さんの激甘発言は思いもよらぬ角度からいきなり来るので心臓に悪い。

いい歳した大人が高校生だらけのファストフード店で赤面してるのもなんだか恥ずかしいので、私は冷たいシェイクで必死に火照りを覚ました。ストロベリーシェイクがいつもより甘く感じる。

「で、お前はどうなんだ」

「え?」

突然の質問に顔を上げて小首を傾げると、和泉さんはさらにこちらの顔を覗き込むように尋ねてきた。

「俺の話なんざもういい。今度は小夏の話を聞かせろ。どんな高校生だったんだ」

そんな興味津々に聞かれても。
和泉さんほど個性的なエピソードもない私は、昔のことを思い返しながら話し始める。

「えーと、フツーの高校生でしたよ。成績もフツーだし、友達もそこそこいて。部活はバドミントン部でした。あ、県大会まで行ったことありますよ、予選負けだったけど」

本当になんの変哲もないな。自分で語りながらなかなかの平凡ぶりに感心する。けど、当時はそれなりに毎日楽しかったものだ。

ところが和泉さんはこんな平凡エピソードにがっつりと食らいついてきた。

「もっと詳しく話せ。電車通学か?自転車か?なんの教科が好きだったんだ。校則は守る方だったのか?部活だってもっと色々あるだろう。全部話せ」

えぇー……。和泉さん私に好奇心持ち過ぎでは。

「いや、そんな面白いこともないですって。ちなみに自転車通学です」

「面白くない訳ないだろう。それから制服の写真があったら見せろ」

真剣そのものの顔でそんな要求をする和泉さんは、一歩間違えれば変質者だ。勘違いした周囲の人に通報されないことを祈る。

「写真は家のパソコンに入ってるんで、あとで送りますね」

「高校だけじゃなく中学のも送れ。小学生のときや幼稚園のときのもだ。もちろん赤ん坊のときのもな」

「えっ全メモリアル要求ですか」

「当たり前だ。生まれたてのお前なんか絶対可愛いに決まってるだろう。俺に見せないでどうする」

独占欲ここに極まれりか。ここまでくるとあっぱれだと感心さえしてしまう。

「じゃあ帰ったら送ります。ていうか私に要求するなら和泉さんのも送ってくださいよ」

独占欲に独占欲で返せば、和泉さんはどことなく嬉しそうに「分かった」と頷いた。
 
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