課長の独占欲が強すぎです。

「お前が謝る必要があるか。どう考えても、女がひとりしかいない環境なのに飲ませすぎたこちらが悪い。侘びなどいらん」

 そう言って突っぱねた宍尾さんに、割って入ったのはやっぱり東さんで。

「まあまあ、せっかくだからお菓子はありがたくおやつとして頂きましょうよ。悪い悪くないじゃなく、受け取る事で橘さんの気持ちが軽くなるもんなんだから」

 さすが少女漫画部門営業課一の空気読み人、私の心情と上司の性格を颯爽と汲み取ってその場を和やかに収める。

 なんだかあまり納得のいってない顔だったけど宍尾さんは大人しくお菓子の箱を受け取ってくれ、私はこれで金曜日の話題には出来れば二度と触れないで欲しいなあ等と考えていた。


 その日の午後。

 来訪されたお客様が帰られて、使ったコーヒーカップを給湯室で洗っていると、あまり大きくない出入り口を塞ぐようにヌッと巨大な身体が入ってきた。

「橘」

 呼びかけられて、洗い物を続けながら振り向くと、宍尾さんが1枚の書類を持ってこちらを向いている。声が水道の音に掻き消されないよう、私は泡だらけの手で慌てて蛇口を締めた。

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