課長の独占欲が強すぎです。

「な……何言ってるんですかぁ。いきなりこんな事して、意味分かんない。ヒドすぎる……っ」

 さっきからの緊張と恐怖と混乱で、ついに涙腺は限界を向かえ決壊した。だってあまりにもヒドい。過干渉したあげく目茶苦茶な理由でキスまでして。私まだ人生で1度しかキスしたこと無かったのに。

 ボロボロと涙を零すと、明らかに宍尾さんの顔色が変わった。これでもかと云うぐらい眉間に皺を寄せ、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。

「泣くやつがあるか、子供じゃあるまいし。泣き止め」

「何ですかその言い草、自分が泣かせたクセに〜」

 全く反省の色が覗えない彼の言葉に、ますます泣けてきてしまう。本当になんてヒドい男だ。

 ヒックヒックとしゃくりあげながら涙を拭っていると、宍尾さんはそれでも私を腕から逃がさないまま大きく溜息を吐く。

 その時だった。ふたりきりだったフロアの扉が開かれ「課長、まだ残ってるんですか?」の声と共に東さんが入ってきたのは。
 
 
< 73 / 263 >

この作品をシェア

pagetop