公園であいましょう
(37)

 夜の公園は、外灯のおかげで暗くはなかったが、
 木々や、遊具が作り出す影が、あっちにもこっちにも
 のびていて気味が悪い。

 見通しが悪い分、聴覚が鋭くなるのか、
 昼間はあまり気にならない表通りの車の音が
 やけに耳についた。

 その音がなければ、世界中に自分一人だけが
 取り残されたのかと、思ってしまいそうだ。

  
 恐いけど、佐倉くんを待っているのだと思うと
 気持ちが落ち着いた。

 それでも約束の時間を過ぎると、不安な気持ちになる。

 
 (また、逢えなかったどうしよう)


 唇をかんでしたを向いていたら、



  「郁。」


 と呼ばれた。

 顔をあげたその先には、肩で息をしている佐倉くんが立っていて。

 しっかり姿がみたいのに、涙が盛り上がってきて、
 視界がぼやけてしまう。

 ぼやけた長身の姿が、大股で近よってきたと思ったら、
 ぎゅっと抱きしめられた。

 あとからあとから涙がこぼれて、佐倉くんの服に染みていく。


 逢えなくなって、泣いたのは、初めてだった。


 お互いがお互いをたしかめるように強く抱きしめあって、
 引かれあうように唇を重ねて、、、、。

 何かの隙間を埋めるように、私達はお互いを与え、
 そして奪い合った。
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